2012年3月4日日曜日

休眠口座というものの存在と、今の社会的な動向、その価値を知っていますか?








最近仕事の関係で休眠口座について調べる事があったので、備忘録的に纏めようと思う。



みなさんは「休眠口座」って知っていますか?
ちなみに僕は全く知りませんでした。

特に自宅にテレビもないのでメディアの情報が入りにくいのですが、最近ちょっと世間一般にも話題になっているみたいですね。

このブログ記事では分かりやすく今の情報を整理してみようと思いますが、僕自身も全く知らなかった事ですし、そもそも金融業界や政府の内情も分からず、こういった分野に明るくもないので、多分、認識違いもポロポロあるかと思いますが、その場合はやんわりとお知らせ下さい。


以下、ざっくり章立てて纏めようかと。


1、そもそも休眠口座って何?
 1−1、休眠口座ってどういう形で扱われているの?
 1−2、海外では休眠口座ってどうなってるの?
2、休眠口座を誰がどうしようとしてるの?
3、実際、休眠口座はどうするべきなの?



1、そもそも休眠口座って何?


休眠口座というものは、その名の通り、眠っている銀行口座の事。
つまり、口座はあるのだけど、お金の出し入れが全くなく、ずーーーっと手付かずの状態のもの。

それってどういう事かと言うと、学生の頃に作ったまま忘れてたり、親が子のために作ったままだったり、
転職などで新たに口座を作った事で使わなくなった昔の口座や、そもそも死んでしまった後に残された口座だったり、
ほとんど陽の目を浴びることがない口座の事です。

そういった口座、多分誰しも一個くらいは持っている気がします。

ちなみに統計によると、日本では約12億の口座があるらしく、単純計算で一人あたり12個も銀行口座を持っている計算になるらしいです。
確かに僕も、過去を振り返ると、5個くらい口座があるような気がします。
でも今使ってるのは2個。

でも、残りの口座、多分入ってても数百円とかだから別にいーや、って思ってます。(多分そうじゃない?)

実はそういった1,000円未満の口座が大多数らしく、でも口座の総量がハンパないため、総額ではかなりの金額になるそう。

その額は、メガバンク3行だけでも年間約300億くらいになり、全部合わせるとなんと約1,000億円にのぼるそうです。
すごいですよね、ケタが違います。


ここで休眠口座の定義ですが、これは銀行・信用金庫・信用組合などで開設された口座のうち、
金融機関によって差はあるらしいですが、最後の取引日から10年が経過したものに対して、まず残高が1万円未満だった場合、有無を言わさず休眠口座とされます。
残高が1万円以上だった場合は、金融機関から「郵送」で通知が送られ、無事届けば通常管理に戻されるが、預金者に届かなかった場合には休眠口座に指定されてしまうのです。

この郵送で通知というもの、10年前に登録した住所から引越している方なんてざらにいると思うので、はっきり言ってザルであり、ほとんどの口座が休眠口座になってしまうでしょう。

そして「休眠口座」扱いにされてしまった口座は、ATMでの取扱いは不可能にされてしまいます。
機械から、「取り扱い出来ません」という寂しいメッセージが表示されてしまうのです。

払い戻しをしたかったら、直接窓口に行けば応じてくれるらしいのですが、ただその際には本人確認のために登録している銀行印や身分証明書などを持って行く必要がある。

たかだか数百円の口座のためにそこまでする労力や電車賃の方が割高なのです。


で、この問題はこれまでもずっとあったらしいのですが、ここ最近熱を帯びてきているようです。
なぜかというと、東日本大震災があった事が大きいのかなと。

というのも、これまでは個人のちょっとした過去口座で、額も微々たるもの。
もちろん亡くなってしまった方の口座に多額の預金があり誰にも知られる事無く残っている、という事もあるでしょう。

ただ東日本大震災によって被災した家族とともに流されてしまった口座というものが、数多く発生するだろうと言われています。
それらはサブ口座ではなく、家族を支えてきたメイン口座であるので、もちろん額も結構なものでしょう。

それらの多くが「休眠口座」認定されてしまう可能性は高いと思います。


1−1、休眠口座ってどういう形で扱われているの?

じゃあ、その年間約1,000億にものぼる休眠口座というものが、どういう扱いを受けているのか、
気になりますよね?

結論から言うと、それらは銀行の「雑益」に計上されてしまいます。
毎年10年目扱いになる休眠口座が生まれるため、銀行は毎年多額の雑益が生まれます。

あれ、でもそれってオカシイですよね?
個人の預金なのに、銀行の雑益になるの?

まさにここが今世の中で議論の的となっているポイントなのです。


「休眠口座は誰のものか?」


という議論です。

一応、銀行の言い分としては、雑益に計上しているのは、私腹を肥やしたいからではなく、
負債扱いでなくなった預金を利益計上して税金をしっかり払うため、という事らしいのですが、
大手銀行はバブル崩壊後の不良債権処理で発生した損失があるため、法人税は払っていないという事らしく、その言い分は通用しないっぽいです。

じゃー誰のものなのか?
も、ち、ろ、ん、預金した個人のお金です。

ただ現実的に、特定個人の手元にしっかりと戻るケースはあまり多くなく、
約1,000億のうち、4割くらいしか戻らないよう。
つまり、約600億くらいが、銀行様のお財布に吸い込まれていくのです。
(でもこれも銀行が詳細なデータを出さないらしく、ほんとか?って所らしい)

もちろん銀行が休眠口座認定して銀行の雑益として利益計上した後でも、
預金者から払い戻しの申請があった場合は、雑損として処理しているとのこと。
(まぁそんなに多くないだろうけど)

しかし、600億ですよ、600億。

それを今、各方面の方々が、
「もっと有効活用しようよ!」
と声を上げているのです。


1−2、海外では休眠口座ってどうなってるの?

海外では、休眠口座を有効活用している国がいくつかあるらしく、
アイルランドがいち早く、イギリスや韓国でも休眠口座基金の管理団体を作り、
社会貢献や福祉事業のために使われているようです。




2、休眠口座を誰がどうしようとしてるの?


ではこの巨額の休眠口座、誰がどうしようとしてるのか。
年間約1,000億ですから、どう転んでも大きな影響があること間違い無しです。

今、この問題にイチ早く気付き活動しているNPO法人フローレンス代表の駒崎さんは、
この休眠口座を他の海外の事例に倣って、震災支援やNPO支援、教育機関や児童相談所への活動資金などとして利用する事を考えているようです。

「休眠口座基金」を貧困・被災地支援対策に 駒崎弘樹(NPO法人フローレンス代表理事)

プランとしては、これら各銀行が抱える休眠口座を一元管理する休眠預金管理財団を設立し、そこに休眠口座基金を作り、総合休眠預金照会窓口を導入する。

その第一の目的としては、元の預金者がしっかりと自分の休眠口座を照会でき、払い戻しに至る事ができる仕組みを横断的に構築する事です。

そして第二の目的として、払い戻しが叶わなかった休眠口座を、提携団体・組織によって「社会的に」有効に活用する、つまり広く一般の国民のために使おう、という事なのです。

もちろんこの際も、各団体に「給付金」、つまり寄付扱いで渡してしまうのではなく、「貸付」や「融資」として提供する。
グラミン銀行のマイクロファイナンス(少額融資制度)のようなイメージ、だと駒崎さんは言っています。

こういった背景としても、第一義的にはそのお金が誰のものかという観点において、
「元の預金者のものである」という大前提を揺るがすことのないよう、しっかりと払い戻しに対応しきる仕組みを用意しておこうという意図があるのだと思います。

駒崎さんのプランとしては、約1,000億のうち、元の預金者に戻される可能性が4割と銀行が言うのであれば、残りの6割のうち、さらに半分をバッファとして引いた3割を「社会的有効活用財源」として活かそう、という考えのようです。

それでも約300億ですよ。

それを、東日本大震災で被害のある地域、家族への復興や再スタートのための資金として貸付してあげたり、社会貢献を行うNPOや社会起業家のための支援として融資したりするというのである。

政府もこの財源の活用を検討しだしているらしく、東日本大震災の被災地企業の支援策などに使おうと思っているらしい。


さて、ここで黙っていないのが銀行ですね。

もちろん各銀行は、これまで利益計上していたお金が、いきなり国に持って行かれるのだから、たまったもんじゃない。
銀行としては何も悪いことはしていないのに、年間数億〜数百億の利益がパアになってしまう。
(これまで利益計上していた事を「悪いこと」と判断するかはみなさん次第)

それはもう激しく反対するでしょう。

僕も細かい事はわからないのですが、そもそも休眠口座の洗い出しにもコストがかかるし、各銀行で仕組み・システムが異なるのに、統一した照合システムを作るなんて無理だ、と言ったり、不可能である理由を上げまくっているよう。

でももともとこのお金は銀行さんのお金ではないのです。
国民のお金なんですよね。
過去ずっとそうしてきたからって、これからもその仕組みがまかり通る道理なんてないですよね。
道義的に考えて、結果的に銀行の利益になってきたという過去は納得がいきません。

政府は、こういった実情があるのに、銀行が透明性を持ってこの休眠口座の詳細を開示していないことを指摘し、情報の追求を進めていくそうです。
(払い戻し4割ってのも過去の最高値であって実際はもっと少ないんじゃない?って声もあるらしく)



3、実際、休眠口座はどうするべきなの?


とまぁ、僕も最近この問題を知ったばかりなので、付け焼刃的な知識ですし、他のサイトや駒崎さんのブログなどに書いている事を纏めているだけなのですが、まぁそこまで間違ってはいないと思います。

一応、最後に僕自身の考えも載せておこうと思います。


多分、この休眠口座の扱いに関する考えは人それぞれだし、反発する人も絶対いるし、
どう転んでも不利益になる人はいるでしょう。


ただ、普通に考えて、駒崎さんのプランには納得も賛同するし、
多額の休眠口座を持っている人や銀行関係者以外の多くの方が反対する理由が分かりません。

個人の預金なのに国が持ってくの?なんでNPOの活動に使うの?横取りじゃない?泥棒だよ?
とでも言う人が出てくるのだろうか。

それは違うと思うし、今回のプランをしっかり読めばそうじゃない事は分かるはず。

このプランでは、個人の預金をその人に戻す努力を最大限行った上で、
それでも宙に浮いてしまう「もったいないお金」を、ただ銀行の利益にするのではなく、
それだったら再度国民の生活のために戻ってくるように有効活用しよう、という仕組みなのだから。


実際、僕も以前まで国際NGOに身を置いていたのですが、
そういった団体は銀行の融資を請ける事が非常に難しく、
活動資金の獲得にとても苦労している。

かものはしの時も、海外の支援活動をしているNPOに貸し出すなんていうリスクを取る銀行はなく、融資なんてほとんど請ける事が出来なかった。

そういった、小さい規模ながら社会的に意義のある活動を行う団体への活動資金に回すのは価値のある事だし、それを貸付、融資としているのだから、お金のバラマキではないのである。

もちろんこのプロジェクトの実現可能性は僕には分かるはずもなく、
銀行が納得するまでのプロセス、統合基金を作るためのコスト、そして誰がそれを管理するのか、
支援団体の決定方針は誰がどう決めるのか、といった課題が多くあるのだと思う。

特に、統合基金を誰がどう管理するか、という点に於いては、
政府、銀行、支援団体のどこにも偏らないような公平性と透明性を持った機関が行うべきであり、
休眠口座の実際額、そこからの払い戻し額、活用財源に切り替える額、実際に支援(融資)に回した額、それにより成し得た価値、というものを、しっかり公表すべきであると思うので、考えただけでも現実感がなくなってきそうなものですね…笑。
(とはいえ理論上は出来そうな気もしますが・・・)

でも、個人的には期待度は高く、財政的にもピンチであるうえに震災でダブルパンチな日本が活性化するためにも必要な動きだと思っている。



超適当な僕個人の考えとしては、
休眠口座扱いになった口座は全てこの「社会的有効活用基金」にしちゃえばいいじゃない、って思う。


国がどう、銀行がどう、という考えではなく、「社会をどう」という視点で。


というか引き戻しに対応しておく事で余計な管理コストが発生してしまうのであれば、
少額口座なんかは払い戻しに対応しない完全なる「寄付金」扱いにしちゃってもいいじゃない、って思う。

さらに10年を待たずとも、長年取引されていなくて数百円が眠っている口座を持っている人に対し、復興支援のためにあなたの口座を解約し、そのお金を基金に回していいですか?という連絡を国と銀行が連携して行えばいいじゃない。
(多分多くの人が「オッケー」って言うと思うけど)

それで半分の人がOKと言えば、そのお金は基金になり社会的支援に回せるわけだし、銀行は口座管理コストが浮くわけだから、お互いメリットはあるだろうし。

その上で、これから新規で口座を開設する際には、必ず、あなたの口座が休眠口座扱いになった場合に、それを銀行都合で解約扱いにし、支援基金に充ててもいいですか?という同意を取るようにしておけばいいと思う。
臓器提供意思表示カードのような感じで。


こういう問題って、昔からの仕組みにメスを入れる事だったり、利権が絡む事であるので、反発も強く、国民の理解を得るにもしっかり説明する必要があるし、メディアが偏った報道をすれば簡単に国民の反発だって買えてしまう。

ネット上でも、良く出ている意見として、
「震災で多くの休眠口座が生まれるって、短絡的じゃない?」
「銀行の利益にしている、って乱暴な考えじゃない?」
とかあるけど、それらも、この問題の本質をしっかり理解すれば納得できるのではないだろうか。

これからの社会では、私たち自身が、問題の本質と、それに対して活動している人のプランの中身をしっかり理解してあげて、「支援」というものに対する前向きな仕組みを後押しする文化を根づかせていかないといけないんだろうな、って思います。


戦っている人の批判することは簡単だろうし、人は変化を避ける傾向にあるのだと思うけど、
そうも言ってられない世の中なんだしね。



しかしつくづく、人ってお金を扱うヒト・コトに対してアレルギー持ってるよなぁ。
支援する、社会貢献する、っていうことには「いいね!」と言うのだけど、実際そのためのお金をやりくりするヒト・コトが現れると、バッシングの声が増える。
なんだろ、そういった「マッチングの仕組み」と「中間マージン業者」を同じに考えているのかな。
(ぜったい間で誰かがもーけてるでしょー!的な)

受益者になるべき広く一般の人たちが、大きなコトを進める原動力が「お金」だと思っている時点で社会は良くならないと思いますよ。少なくとも僕は原動力が「想い」である団体にいた事もあるのである程度理解しているつもりです。

ヒト・コトを疑う、批判する事にエネルギーを使うのではなく、信じる事にエネルギーを使い、信じるに足るための理解・納得を得られるまで徹底的に追求するくらいの努力をした方が、多分人生楽しいですよ。
(って偉そうにすいません・・・)




#追記
実はこの記事を書くきっかけになったのは、知り合いからの相談で、休眠口座の情報サイトを作る事になったので、自分の中での情報整理のためでした。
で、先日そのWEBサイトがオープンしたので、リンクを貼っておきます。
休眠口座について考えるための情報サイト



▼参考